(写真1)マンハッタンのトルコ料理店「ダルビッシュ」
米ニューヨークのミッド・マンハッタン47丁目と7番街のビジネス街。仕事を終わっていつも友人と待ち合わせるのが、トルコ料理店のカウンター・バーである。その名を
ダルビッシュ(Dervish)という。「Turkish Restaurant(トルコ・レストラン)」「Mediterranean Restaurant(地中海レストラン)」と見える。(写真1)
(写真2)プロ野球の寵児、ダルビッシュ投手(公式カレンダーから)
ダルビッシュ? 日本のプロ野球で人気を上げている日本ハムの投手(写真2)と同名ではないか。彼の父君は(元)イラン人とのことだ。
そこで、頭の中のサーキットがつながった。ダルビッシュ(Dervish あるいはDarvish)とはイスラム教シーア派のひとつの流れ。中近東、ことにイラン、トルコにおける
世俗を捨てたイスラム教徒である。「アラー神の下においては人間皆平等」ということで、物質主義を捨て、世俗を離れて托鉢で生計を立てている。
一部で、「貧乏人」という解説も見られるが、「清貧」と解するのが適当であろう。イスラム教2大宗派の1つ、シーア派は開祖モハマッドの従兄弟で娘婿のアリ(Ali)をImam(指導者)として仰ぐ。ダルビッシュ投手の父君が息子に「有(ゆう=あり)」と名づけたのは、その指導者「アリAli」への思いがあったのだろうと(勝手に)想像する。
マンハッタンのレストランDervishの壁にある絵は、トルコ南部のコンヤにあるスーフィー派の神秘的な「回る宗教」Dervishである。(写真3)
(写真3)トルコ・レストラン内のダルビッシュの絵
Dervishはまた、指導者アリの苦行を偲んで自分の体に鞭打って血を流す「アシュラー」というシーア派の重要な宗教行事の担い手として、「THE ORIENTALIST」に記述されている。アゼルバイジャンのバクーに生まれたユダヤ人で、後にイスラム教に改宗し、キリスト教徒の女性と結婚した作家Nussibaum(1905-1942)が主人公である。
New York TimesのTom Reissが、彼の数奇な運命を5年かけ追跡調査した著書
THE ORIENTALISTは、バクーでの石油利権関連から、ノーベル(ダイナマイト発明者)の事業、ナチスからムッソリーニ、そしてまたニューヨークでのナチ・エージェントといった世界関係まで広がる。実にスケールの大きい記録で、我々日本人には想像を絶する「地政歴史記」である。
そこにある「イスラム教に改宗したユダヤ人が祝うクリスマス会」の写真(写真4)には目が釘付けにさせられる。
日本のプロ野球の寵児、ダルビッシュから話は複雑な中東の「地政歴史」に発展したが、同書を読んでいると、世界はいかにも人間的、即ち多様な文化の集合体であると痛感する。だからこそ、このグローバライゼーションの時代に、「地域研究」の果たす役目は大きい。
こう考えてくると、内外から思いがけずさまざまなコメントを頂戴した拙稿
「いま『9・11テロ』の真相解明を期待する」の根にある「ブッシュ政権には現場感覚・現場情報が不足しているのではないか」という思いを改めて強くする。
(下の写真4は、クリックすると拡大表示されます。)
(写真4)イスラム教徒とユダヤ人のクリスマスパーティー(1913年、バクーにて。「THE ORIENTALIST」から)
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